俳文学会東京研究例会:第479回(2025年6月28日(土)午後2時30分~午後5時、江東区芭蕉記念館会議室)

俳文学会東京研究例会:第479回

日時:6月28日(土)午後2時30分~午後5時
場所:江東区芭蕉記念館会議室

【研究発表】

○佐藤淳子氏「花好発句の観照」

花好とは、北関東遊歴時代の与謝蕪村を扶けた一人である箱島善兵衛布慶、俳名阿誰の息吉兵衛敬有、俳名浙江(閑鵞)の妻シュン、俳名花好と思われる 。箱島家は関宿藩境町の穀問屋、豪商にして、代々脇本陣を勤めた家系であった。花好の発句注釈を行おうと考えた発端は、箱島阿誰に関する著書『俳人箱島阿誰とその周辺 』の書中、発句について「その力量には凡庸でないものを感じる。」と著者林貞夫氏によって特筆された箇所に触れた点からである。
現在判っている花好発句は二十五句あるが、中には否定的な要素を持つ語句が散見され、うち否定表現のある句は五句、「ネガティブな表現」を用いた句は五句確認でき、発句全体の約四十パーセントを占めていた。これらの句意を見ていくと、花好の世間や自身に対する観照が強く感じられ、これは花好発句の特徴といえるのではないかと考えた。

牧藍子氏「許六自注『追善註千句』第八百韻の検討」

『追善註千句』は、許六が芭蕉の十七回忌追善に巻いた独吟百韻一〇巻に自注を付したものと、追加の当日追善十七吟半歌仙を収めた作品である。本発表では、本書の第八百韻のうち、注釈の困難な箇所を取り上げ、私案を提示する。また、本作の自注は、『俳諧問答』をはじめとする諸俳書に説かれる許六俳論と密接な関連が認められるなど、非常に有意義なものであるが、必ずしも句の内容に即して付されているとは言いがたいものも散見する。そこで、本作の自注の性格に関して、現時点における考察もあわせて報告したい。

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